つりたん

都内から釣りに繰り出す釣り人

感染性釣り熱 その2

中学の時に発症した釣り熱は五年の時を経て、また熱を帯びて来たが、季節外れの風邪のように長く微熱が続く程度であった。

 

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大学時代の釣行は亀山湖や高滝湖、河口湖といった有名ポイントを攻めていた。

関東の一級ポイントを周っていたが目立った釣果はなく、釣り半分、旅行半分な気持ちだったが私達はそれでも十分楽しかったのだ。

 

恥ずかしいことに私は車の免許を持っていない。これは今も変わらず、釣りに行くとなると鴨の子供のように誰かに付いて行かねばならない。

 

そのイメージが強く残っていたのか、住んでいる近くに釣りができる場所はないと思っていた。

田舎から都会に来た鴨は自身の拠り所となる水辺なんてないと勝手に思い込んでいたのだ。

 

大学を卒業すると釣り仲間だった友達とも離れ、就職、結婚といった人生のイベントをこなし、さらに都会へと住む土地を変えていた。

 

中学卒業時と同様に再度熱は冷め、体に残ったウイルス達は影を潜めた。

 

仕事も板について来て、そろそろ自分にも部下が出来るという頃、遊び仲間の後輩と居酒屋でたわいもない話をしていた時、後輩が殻になった枝豆を箸でいじりながらこう呟いた。

 

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「俺、趣味とかなくて休日暇なんですよね。

なんか面白い趣味ないですか?」

 

私の仕事は口が裂けてもホワイトとは言えず、忙しい毎日を送っていたため、手軽に始められる趣味など持ち合わせていなかった。

 

「なんか、こうアウトドア的なやつがやりたいんですよ。自然がバァーッと広がる所でキャンプとかBBQとか。でも1人じゃできないでしょ?なにかないすかねー。」

 

自然の中でバァーッとね...

自分の田舎は自然だらけだったなぁ。

山もあったし、川や池もあったし。

川や池?

釣りとかいいなぁ。またやりたいし。

 

そう思った時に潜んでいたウイルスたちが動き出した。

 

「釣りとかどう?行ってみる?」

 

「釣りですか!いいですね!やったことないんでやりたいです!」

 

「明日行くか?」 

 

「明日ですか?もう夕方ですよ?まぁ休みだから行けなくはないですけど...」

 

よし決まりだ!と思ったやいなや、大学時代の釣り仲間に片っ端から電話をかけた。

 

するとどうだろう。みんな予定が空いており、行けると言うのだ。

友達と呑みに行くのですら中々予定が合わず叶わないことが多いというのに、ものの30分程度で8年ぶりの釣行が決まった。

 

長い間息を潜めていたウイルスたちは、ここだといわんばかりに、動きを激しくしていくのだった...

感染性釣り熱 その1

釣りは人間が原始的な生活をおくっていた時代から存在する伝統的な狩猟方法だ。
棒と糸と針があれば魚を捕らえることが出来る。
しかし、魚は”自然”そのもので、そんな単純に、簡単に、思い通りには釣られてくれない。
だからこそ釣りは面白いと感じられる。

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第1次釣りブームは中学生の時。
ミレニアムに起こったブラックバスフィッシングの盛り上がりで、ブラックバスが起こした波紋は、確実に福島の田舎まで伝わっていた。
「釣りがしたいからロッドを買ってくれ!」
そう両親に伝えたのは、自ら釣りをしたいと思ったからなのか、友人に誘われて出た言葉なのかは、もう覚えていない。

田舎という娯楽が少ない環境だったので釣り仲間に困ることはなく、毎日のように近くの野池や川でブラックバスを釣りに出かけていた。

釣れることもあれば、釣れないこともある。
釣りに行くという行為がなにか冒険的な雰囲気があり好きだったのだ。

中学時代にはまった釣りも高校に入るといつしか足取りが重くなり、もっと楽しいと思えることに時間を遣うようになった。

高校生というかけがえのない青春はあっという間に過ぎ、大学に進学するころには釣りが好きだったという記憶は脳の片隅においやられていた。

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大学入学をきっかけに関東に出てきた私は、大学生特有の”自由”を謳歌していた。
お金こそ持っていなかったが、構ってくれる友人のお陰で暇することも無かった。
懐かしいフレーズを再度聞いたのは大学二年の頃、
埼玉に住んでいた友人からこんな誘いがあった。

バス釣りしたことある?暇ならバス釣りに行こうよ」

バス釣り。この言葉を聞いて、脳内で眠っていた記憶のボイルが起こった。

「いくいく~!」

友人が運転する車で向かったのは埼玉にある管理釣り場”吉羽園”。
関東のブラックバス管理釣り場では有名な場所だ。
この時持っていったタックルは買ったのか、借りたのか、地元から持ってきたのかはなぜか覚えていない。
かわいらしいバスが何匹が釣れたのは覚えており、中学生の自分もその時は戻ってきていた。

ここから第2次の釣りブームが始まる…